月の記録 第25話


枢木スザク。
現在絶賛困惑中です。

ルルーシュと同室といっても、この大きな貴賓室には寝室が複数あり、そのうちの一番大きな寝室をルルーシュ、もう一つの寝室・・・従者用の寝室をスザクがという事だったため、同じベッドでという流れは幸か不幸か避ける事は出来た。よくよく考えれば当たり前な話だが、同じ部屋と言われた時同衾だと思い込んでしまったのだ。
湯浴みの準備は既にされていたため、ルルーシュはここ最近よく目にするメイドを連れて浴室へ入って行った。暫くすると、ルルーシュが脱いだ皇族服を手に、メイドは浴室から姿を現す。その頃に、本来であればアリエスにいるはずのメイド長がワゴンを押して入ってきた。気難しいルルーシュの世話を一手に引き受けていた彼女が此処に来ているのは当然かとスザクは納得した。そう言えば、真っ先に部屋の中を確認するため動いたのも彼女だった。ルルーシュのイライラスイッチを熟知しているから、部屋の中も彼の不評を買わないよう弄っているかもしれない。

「スザク様、お疲れ様でございます」
「ありがとうございます」

差し出されたのは、琥珀色の液体が入ったグラスだった。
あの夜会では女性たちに囲まれ身動きが取れなかったこともあり、ルルーシュもスザクもジノも、飲食を一切していなかったから有難い。それを見越していたのだろう、テーブルには次々と食事が並べられていく。それも、二人分。

「あの、自分は」

殿下と共に食事をするわけには、と言ったのだが、マリアンヌ皇妃からの命令だと言って聞かず、給仕を終えると部屋を後にした。

「・・・そう言われても、無理だよ・・・」

絶対に機嫌を損ねる。
まだルルーシュの専任騎士に戻る道を諦めていないのに、その障害になりかねない出来事が増えてしまう。だいたい何でこんな命令を。味方でいてくれるのは嬉しいが、ルルーシュのイライラスイッチを押すマネはしないで欲しい。捨てられた犬のような、しょんぼりとした顔をしながら、スザクはグラスを傾け、咳き込んだ。

「・・・!?こ、これ、お酒!?」

しかもきつい、ものすっごくキツイ!度数いくつ!?
仮にも現在護衛の任務中なのに、お酒を出されるとは思わなかった。
しかも軽いものならいざ知らず、こんなきついものを。
ルルーシュのグラスの横に置かれた水差しの中身同じ琥珀色だけど・・・まさか・・・。

「どうした枢木、顔が赤いぞ?」
「わ!?」

突然掛けられた声に、スザクは明らかに動揺し体をびくりと震わせ、慌てて振り返った。その反応に、声をかけたルルーシュも驚き、目をぱちくりと瞬かせていた。
この7年の間見せた事の無い素の反応。
いつもの鋭さや、意地悪な笑みなどそこに無い、年相応、いや、年よりも幼く見える表情でこちらを見ている姿は・・・可愛い。可愛いが・・・冷静になり、よく見るとバスタオルで髪を拭きながらやって来た彼はバスローブ一枚だけの 姿で、ますますスザクは驚いた。いつも皇子として隙きのない姿しか見せなかったのに、今は信じられないぐらい隙だらけだ。あれ?さっきのお酒一口だけで酔っ払ったのか?あるいは幻覚剤でも?

「・・・ああ、食事の用意が出来たのか。私は先に食べているから、お前はさっさと風呂に入れ。汗臭いぞ」

先ほどの可愛らしい顔から一変し、いつもの不愉快そうな顔をしながらルルーシュは言うと、スザクの向かいの席に腰かけた。
いや、腰掛けるのはいいけど、その格好で足を組むのは止めて!と、スザクはとび跳ねそうな心臓を押さえつけ、「では失礼してお湯をお借りします」と、どうにか声を出してから自分に割り当てられた寝室に着替えを取りにいった。
部屋に入り扉が閉ざされるなり、スザクはその場にしゃがみこむ。

「・・・何、僕、試されてるの!?」

赤い顔で髪をかきむしりながら、スザクは何なのこの状況!陛下!マリアンヌ様!僕にどうしろと!?と盛大に呻いた。それともこれは罠か。罠ならハマった瞬間に終わってしまう。どうにか気持ちを落ち着け風呂場へと移動し、ルルーシュが先に入ったことを意識しないようお湯に浸かり、どうにかこうにかお風呂から出ると、その先には更に頭を抱えたくなるようなものがあった。

「で、殿下!?ちょ、飲んだんですかこれ!?こんなに!?」

嘘でしょ!?と思いたいが、見るからに酔っぱらった顔のルルーシュが、グラスを傾けながらちびちびと食事を進めていた。恐ろしい事に、水差しの中身は半分ほど消えている。間違いなくこのきつい酒をこんなに飲んだのだ。

「なんだ?俺が飲んだら何か問題があるのか?」

言葉がしっかりしているように思えるが、目も表情も完全に酔っている事が解る物だった。だって、ルルーシュが気持ちよさそうに笑っている。7年間見下すような視線しかしなかった、あのルルーシュが。しかもお酒で肌が赤く染まり、ぐでぐでに酔っている姿ははっきり言って可愛いとしか言えない。

「殿下、お酒ですよ!?」
「そうだな、結構きついが、美味いぞ?ほら、お前も腹が空いただろう、さっさと座れ。・・・なんだ、まだそんな重苦しいラウンズの服を着ているのか?脱げ、スザク」
「ええ!?」
「いいから脱げ!これは命令だ。らくな服はないのか?ああ、バスローブがもうひと組あったな」

どれ、取って来てやろう、と、ルルーシュはふらつく足で立ち上ったので、スザクは慌てて制し、無礼を承知でその腕をつかみ、椅子に戻した。
俺が取って来てやる取ったのにと、不貞腐れた姿も可愛い。
・・・って、違う!

「で、殿下、流石に自分はバスローブは」
「だが、それしかないのだろう服」
「あります!ありますから!すぐ着替えてきます!」

大急ぎで着替えるためい、スザクは寝室へ駆けて行った。

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